なぜ敬語が必要なの?~言葉のマナー “正しい敬語”で品格アップを!
2019/02/05
みなさん、こんにちは。
トップマナーOJTインストラクターの東 節子です。
敬語は、長い日本語の歴史の中でも常に重要な役割を担ってきました。世界の言語の中でも、日本語のように複雑に体系化された「敬語」がある国は、非常に少ないと言われています。
それだけに敬語を難しいと感じている人は多いようで、マナー研修に行くと、「敬語」が苦手とおっしゃる方は、若い方では7~8割に上ります。
きちんとした敬語を使わなくてもある程度の敬意の表現はできますが、社会人として会社や得意先の方々と付き合いが深まってくると、どうしても正しい敬語が必要になってきます。
敬語は何のために使うのでしょうか?
まずは相手に対する尊敬の気持ちを表現するためですが、敬語を使うことでお互いの関係を良好にすることもでき、話されている敬語を聞くことで、立場や上下関係の確認もできます。
それだけではなく、話し手の品位を保つ効果もあるとされています。このためにも、私は正しい敬語が話せるようになりたいと思っています。
敬語は、大きくこの3種類に分類されています。
(1)尊敬語・・・相手自身や相手の物や行動を高めて敬意を表す言葉です。
(2)謙譲語・・・自分自身や自分の行動を謙遜してへり下ることで、相手を高める表現です。
(3)丁寧語・・・聞き手に対して丁寧に述べる言葉です。
「です」「ます」「ございます」を付けて使います。
相手や内容を問いません。
さらに謙譲語Ⅱ(丁重語)と美化語を加え、細かく5種類に分けられることもありますが、まずはこの3つが基本です。
(分類参照:平成19年2月2日 文化庁 文化審議会 「敬語の指針」)
尊敬語と謙譲語 まったく違う二つを混同しないように
「尊敬語」は、相手自身や相手の物や行動を高めて敬意を表す言葉なので、主語は「相手」です。
一方、「謙譲語」は、自分自身や自分の行動を謙遜してへり下ることで相手を高める表現なので、主語は「自分」です。
このように、二つはまったく反対の表し方なのですが、尊敬語は「お(ご)~になる」、謙譲語は「お(ご)~する」という作り方があり、紛らわしいのでよく間違われます。
この使い分けは、敬語の基本となるところなので、間違えると失礼で、ちょっと恥ずかしい……ということになります。
お客様に対して「いかがいたしますか」という声掛けをときどき聞くことがあります。これは相手に「いたす」という謙譲語を使っているので、間違い表現です。
正しくは、「いかがなさいますか」という尊敬語にしなければなりません。
尊敬語や謙譲語には、それぞれに敬度の高い置き換えの言葉もありますので、よく使う言葉は
しっかり覚えておくといいですね。
二重敬語は間違い 「れる」「られる」の乱用は避けましょう
1つの単語に複数の敬語を重ねるのは、「二重敬語」と言われる誤った使い方です。特に、「れる」「られる」を言葉の最後につけると丁寧になるという気がするためか、この間違いは結構多くみられます。
ここでの「れる」「られる」というのは尊敬の助動詞で、動詞にこれをつけると尊敬語になります。でもすでに尊敬語に置き換えた言葉につけると、「二重敬語」になってしまいます。
(例) 「おっしゃる」……… 〇
「おっしゃる」+「れる」=「おっしゃられる」……… ✕
「お越しになる」……… 〇
「お越しになる」+「れる」=「お越しになられる」……… ✕
二重敬語で気を悪くする人は少ないと思いますが、やはり正しい使い方ができる方がスマートですね。
ただし例外もあります。既に定着している言葉は、許容範囲として容認されています。
(例)「伺う」+「お~する」=「お伺いする」………… 〇
「召し上がる」+「お~なる」=「お召し上がりになる」……… 〇
「伺う」は「行く」や「聞く」の謙譲語、「召し上がる」は「食べる」の尊敬語で、いずれも置き換えるだけで十分な敬意を表します。でもそれだけだとなんだか足りないような気がして、ついつい「お~する」「お~なる」をつけてしまいますが、これはOKなのですね。
また参考までに、二つ以上の語をそれぞれ敬語にして接続助詞「て」でつなぐのは、「敬語連結」と言われています。これは「二重敬語」ではなく、間違いではありません。
(例)お読みになっていらっしゃる
「読む」→「お読みになる」 + 「いる」→「いらっしゃる」
=「お読みになっていらっしゃる」 〇
敬度の違いを意識して 相手に応じた使い分けができたら上級!
尊敬語、謙譲語、どちらもいくつかの作り方があります。
(1)動詞+「れる」「られる」 ( 話す⇒話される/食べる⇒食べられる)
(2)動詞+「お~になる」 ( 話す⇒お話になる/食べる⇒お食べになる)
(3)動詞を特定の言葉に置き換える ( 話す⇒おっしゃる/食べる⇒召し上がる)
この3通りが代表的ですが、実はそれぞれに敬度に違いがあり、(1)→(2)→(3)の順に敬度(敬う度合い)が高くなるとされていています。
「れる」「られる」をつけるだけよりも、個々の形を覚えなければならない置き換えの方がより上級となるようですが、上級秘書などはこの使い分けも求められると言われています。
基本の敬語はOKという方には、是非言葉の敬度を意識し、相手によって適切に使い分けて
いただきたいものです。
たとえば、会社の中で、一般職の私が課長の話を部長に伝える場合
「〇〇部長、△△課長はこのようにおっしゃいました」
という最上級の敬語を使うと少し違和感があるようなときに、
「〇〇部長、△△課長はこのように言われました」という低い敬語を使うと
いいとされます。
ただし、このケースでは、部長にとっては課長も私も部下なので、まとめて下位ととらえ、「〇〇部長、△△課長はこのように申しておりました」が最適という説もあります。
敬語って難しいですね。
言葉は時代とともに変化すると言われます。
敬語も社会背景や人間関係の在り方などの変化に応じて、絶対的なものから相対的なものへと変わってきました。
それでも公私ともにあらゆるシーンにおいて必要なものにかわりありません。かといって、意識し過ぎて慇懃無礼な話し方になるのも残念です。
敬語も含めた言葉の能力は、一朝一夕で身につくものではありません。日ごろから正しい敬語を意識して聴き、馴染む機会をたくさん作っていただけたらと思います。
正しい敬語であなた自身の品格アップも目指してください。
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