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七草粥のイメージ

長く続く風習には理由がある!人日の節句とはどんな日?1月7日に七草粥を食べるのはなぜ?

2021/12/31


みなさんこんにちは。
マナーOJTインストラクターの山田真由美です。

皆様、お正月をいかがお過ごしですか?
行動制限の緩和で、久しぶりに実家で食卓を囲んで過ごすという方もいらっしゃるでしょうか。

お正月といえば豪華で美味しい料理が並び、ついつい食べ過ぎてしまいがち。
会えない時間が長かった分、お正月のごちそうとご家族、ご友人との語らいは、楽しい時間になっていることと思います。
そして、ついつい食も進む…。

年末からの忘年会シーズンから、お正月にかけては、ついつい食べ過ぎ飲み過ぎがちになってしまう時期ですね。
そんな疲れた胃腸をやさしくケアしてくれるものに、昔からある『七草粥』があります。
七草粥のイメージ
七草粥を食べる1月7日は『人日の節句(じんじつのせっく)』です。
『人日の節句』とは、あまり聞き慣れませんね。
年のいちばんはじめにやってくる五節句のひとつです。

人日の節句とは?五節句とは?
人日の節句に七草粥を食べるのはなぜ?等、
日々の暮らしの中に息づく習慣を丁寧に実践されたいあなたならきっと気になるでしょう。
このコラムでは、人日の節句にまつわる風習についてお伝えします。

SDGsへの取り組みも盛んになっている今、日本伝統のシンプルな生活は世代を問わず見直されています。

伝統文化を知り、健康を保つ昔の人たちの知恵を、あなたの生活にも取り入れてみませんか?

五節句とは?人日とは?人を大切にする日になった成り立ちを知る

「1月7日は七草粥を食べる日」
これは広く知られていますね。
しかし、この日がお節句だということはあまり知られていません。

1月7日は五節句のひとつ、『人日(じんじつ)の節句』で、五節句とは、年に5回ある季節の節目を表す日です。

『節』とは、唐時代の中国の暦法で定められた季節の変わり目のことです。
この暦法と日本の稲作を中心とした農耕の風習が合わさったもので、五節句で定められた日に宮中で邪気を祓う宴会が催されるようになりました。

五節句は、1月7日の『人日(じんじつ)』の他にも、
3月3日の『上巳(じょうし)』、5月5日の『端午(たんご)』、7月7日の『七夕(しちせき)』、
9月9日の『重陽(ちょうよう)』があります。

上巳は桃の節句・雛祭り、端午は菖蒲の節句で子どもの日、七夕は星祭りとしてなじみ深く、ご家庭でにぎやかにお祝いされる方も多いでしょう。
五節句は、私たちの生活の中にもしっかりと根付いている節句ですね。

ところが、人日、重陽の節句となると、聞き慣れずピンとこない方も多いかもしれません。

9月9日の重陽の節句は、「菊の節句」とも呼ばれ、お酒に菊の花を浮かべた菊酒を飲んだり、栗ご飯を食べたりして、秋の味覚を楽しみます。
今でこそあまりなじみがありませんが、旧暦を使用していた頃は、五節句を締めくくる最後の行事として盛んに行われていたそうです。

人日の節句は、古代中国から伝わってきました。

古代中国では、正月1日には鶏、2日には狗(いぬ)、3日には猪、4日には羊、5日には牛、6日には馬と、元日から順に新しい年の運勢を占っていて、その日だけはその動物を殺さないように、大切にされていたそうです。

そして7日目に人を占ったそうです。
そのため、1月7日を人の日、『人日』というようになり、ほかの動物を占った日と同様に、この日は人への処罰もなかったそうです。

他の五節句は、月と日が同じ奇数の数字を重ねているのに対し、人日だけは1月7日なのは、古代中国のこの伝統があったからなのですね。

1月7日は人を大切にする日として、1年の最初に迎える節句にふさわしいですね。

どうして1月7日に七草粥を食べるの?

人日は『七草の節句』とも呼ばれ、七草粥を食べる習慣があります。
これも中国で7種類の菜を入れた『羹(あつもの)』を食べる風習が日本に伝わったものです。
羹とは、汁を多くして煮たものです。

日本でも平安時代の頃には、年の初めに野に出て、芽が出たばかりの若い菜を摘む行事がありました。

新年と言っても旧暦の頃のことですから、今でいうと2月頃になるでしょうか。
摘んできた若菜を粥にして食べると邪気が払われて病気が退散すると考えられていたためです。

この時期に七草粥を食べる文化が、広く庶民にも広まったのは江戸時代になってからのことです。

『君がため 春の野に出でて 若菜摘む
我が衣手に 雪は降りつつ』(古今集)
平安時代、光孝天皇(830~887)
百人一首にもなっている有名な歌です。
若菜は新年をあらわす季語にもなっていますね。

若菜の代表的なものが、セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ(カブ)、スズシロ(ダイコン)の「春の七草」です。
七草
無病息災、長寿健康を願う意味のほかにも、七種類の若菜を入れた七草粥で、青菜の摂取が不足しがちな冬の時期に栄養を取り入れ、健康に過ごしたいという願いが込められています。

現代では、七草で「栄養を補給する」と考える時代ではなくなってしまいましたね。
しかし、年末から年始にかけて楽しい時間をついつい食べ過ぎ、飲み過ぎで過ごしてしまったときなどに、こうした昔から伝わる風習にこそ、私たちが健康にシンプルに生活するために必要なヒントが隠されているものです。

七草で疲れた胃腸を整えよう♪七草の種類と効能

♪七草なずな 唐土の鳥が
日本の国へ 渡らぬ先に
ストトントントン♪

これは七草を作るときに歌われる『七草なずな(七草の歌)』というわらべうたです。
実際には、人日の節句の前日(1月6日)の夜、七草粥を準備するときに歌われます。

唐土の鳥とは中国からやってくる渡り鳥のこと。
どうやら、害虫や疫病を運んでくる鳥を追い払う「鳥追い」という儀式から生まれた歌のようです。

地域によって歌詞や歌い方は様々で、歌いながら包丁でトントントンとリズムを取ったり、すりこぎやおたまなどの台所用品を使ってまな板に打ち付けて歌ったりする地域もあるようですね。
音をたてて歌うことで、鳥を追い払い、邪気や病気を追い払いたいという願いがこもっているのではという説があります。

このように作られる七草粥ですが、儀式的な行事というだけではありません。

七草にはおよそ12種類の薬膳効果があるほか、7種のビタミンやミネラルが含まれるということで、私たちの体に必要な栄養がたっぷりです。

◆芹(せり)

勝負に「競り」勝つという意味をかけ縁起物の食材。独特の爽やかな香りが特徴です。
胃を丈夫にする効果や解熱効果、利尿作用、整腸作用、食欲増進、血圧降下作用などあります。
疲労回復、冷え性・貧血予防にも良いとされています。
湿地や湿原など、水辺に多く自生しています。

◆薺(なずな)

解毒作用や利尿作用、胃腸障害やむくみをおさえる効果があります。
「ぺんぺん草」とも呼ばれ、空き地や土手、道端などに自生しています。
七草粥には、花芽を持つ前の若芽を使います。

◆御形(ごきょう)

咳や痰、のどの痛みに効果があるといわれています。
「ハハコグサ」とも呼ばれ、秋に芽を出し、翌年の早春に黄色い花を付けます。
田のあぜ道などに自生していて、葉に粉をまぶしたような小さな草です。

◆繁縷(はこべら)

胃炎に効果があり、昔から腹痛薬として使用されていました。
歯槽膿漏に効くと言われ、江戸時代にはすりつぶして塩を加えたものを歯に塗ると虫歯の痛みに効くと流行したそうです。
「ハコベ」とも呼ばれ全国に分布しています。

◆仏の座(ほとけのざ)

下熱、健胃、高血圧予防のほか、煎じて飲むとアトピー性皮膚炎に良いとされています。
食用のホトケノザはキク科の「コオニタビラコ」を指します。

◆菘(すずな)

蕪(かぶ)のことです。
胃腸を整え消化を促進し、シミ、そばかす予防、貧血予防、リラクゼーション効果が期待できます。

◆蘿蔔(すずしろ)

大根のことです。
風邪、消化健胃、ひび・あかぎれ予防、咳や喉の痛みの緩和、殺菌のほか、美容に効果があるといわれます。

冬の寒い時期を乗り越えるために、不足しがちな栄養素を補給するかという昔の人の知恵。
長く続く伝統や風習には、それだけの理由があるものだとあらためて感じますね。

半世紀近く前ですが、祖母に連れられて野草を採りにでかけたことがあります。
近所の田んぼや畑のあぜ道に、ナズナやハコベラ、ホトケノザなどが、採り切れないほどたくさん生えていました。
残念ながら今はその田んぼもなくなってしまいました。

皆さんも機会があれば、野草図鑑を片手に七草を探してみてはいかがでしょうか。
七草すべて採取することは難しくとも、野草は案外身近にあります。

春の七草も、スズナ(かぶ)、スズシロ(大根)以外は、簡単に見つけられることでしょう。
ただし、野に生えているものですから。
お召し上がりになる際には、農薬がかかっていないか、排水などで汚れていないか等の確認はご自身でしっかり行ってくださいね!

七草を美味しくいただくコツは青臭さを取り除く下処理です。
野草はアクが強いので、アク抜きしましょう。

葉物の七草はザクザク刻み、スズナ・スズシロはスライスします。
小さじ1杯の塩でもみ込んで10分ほどおきます。
その後熱湯で1分ほど茹でたのち冷水につけ、ザルにあげたらアク抜き完了です!

シンプルな七草粥であれば、お粥に七草を混ぜ合わせひと煮立ち。
お好みで塩を振って出来上がり♪

ほかにも、昆布やカツオの出汁を加えたり、梅を入れてアクセントとして入れてみたりもおすすめです。

人日の節句は『人』を大切にする『日』
大切な人の健康を願い、七草粥を食べお正月のごちそうで疲れた胃腸を優しく癒す日です。
みなさんのご家庭で、七草で自然の恵みを味わってくださいね。

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マナーOJTインストラクター 山田真由美

講師 山田真由美 blog

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