今こそ子どもに伝えたい!和室の知恵とマナー
2021/07/30
夏休みに実家の畳でゴロンと昼寝。
畳の匂い、肌触り、いつもより天井が高く感じるなんとも言えない解放感!
そんな「和室は居心地がよい場所」というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
しかし、生活様式や住宅事情の変化によって、近年和室は減少の一途をたどっています。
また、最近では床生活の和室なら、寝ている赤ちゃんが転げ落ちる心配が無いといった声や、防音効果があるから下の部屋の方に比較的迷惑がかからないといった声が聞かれます。
畳にはクッション効果があるから子どもの怪我の心配が少ないと、安心、安全な子育ての場としても和室は見直されています。
おうちの和室は減っていますが、親戚のお家やちょっとステキな旅館など和室に触れる機会はまだたくさんあります。
華道や茶道などのお稽古をはじめれば、和室の知識は避けては通れません。
これから成長し、社会に出ていく子どもたちに、ぜひ一度は、和室の素晴らしさと過ごし方やマナーを教えてあげてください。
このコラムでは、和室の良さとこれだけは知っておきたい和室のマナーについてお伝えします。
「畳は居心地がよいもの!」です。
そんな畳の良さも一緒に、お子さんにお伝えください。
気持ちよさの秘密! 知恵の詰まった和室をしっかり理解し良さを伝えましょう
和室に居心地の良さを感じる方は少なくないと思います。
実家に帰れば畳にゴロンと横になって、気がつけばそのままお昼寝…。
和室は、リラックスできる場所ですね。
この気持ちよさの秘密は、和室を形作る素材にあります。
まず畳です。
畳は、湿度を調節する機能が備わっていて、一説によるとたたみ一畳で500mlもの湿気を吸うとも言われています。
このとき、一緒にアセトアルデヒドやホルムアルデヒドなどの有害物質も吸着します。
さらに畳に使われているい草には、ストレス解消や精神を安定させる森林浴のようなリラックス効果があります。
まさしく畳は「天然の空気清浄機」というわけです。
畳の豆知識|熊本県畳工業組合
また、和室には欠かせない「障子」
外と家の内を仕切る、昔の窓やドアの代わりあるものというイメージですね。
この障子にも、素晴らしい機能があります。
障子に使われる和紙は、直射日光を遮るだけでなく光を拡散させる特性があります。
室内を明るくするだけでなく、畳同様、障子紙にも吸湿性や換気能力、それにれ、断熱効果なども期待できます。
湿度が高く、直射日光の厳しい日本の夏を快適に過ごす知恵が和室にはつまっているのですね。
現在、地球の未来のためにSDGsという取り組みが盛んに行われています。
気密性の高い場所に住むことに慣れた現代の私たちには、和室をはじめとする『和の暮らし』に学ぶべきところが多いかもしれませんね。
子どもの「なぜ?」に答える! 和室のマナーと伝え方を再確認しよう
和室に馴染みのない子どもにとって、初めてだと楽しくなってしまうこともあるかもしれません。
のびのびと和室の気持ちよさを体感させてあげたいと思う一方で、場合によっては『先に和室のマナー教えておけば良かった』と、人知れず冷汗をかいてしまう。なんてことがあるかもしれません。
そうならないために、これだけはしっかり子どもに伝えたい、和室のマナーについて見直しましょう。
踏んではいけないヘリと敷居
畳のヘリと敷居は踏んではいけないと昔から言います。
私たち大人は『そういうものだ』と思っているので、そのまま子どもに伝えると「なんで?どうしてダメなの?」と質問されるかもしれませんね。
お子さんに伝える際には、『何故そうする必要がるのか?』も一緒に伝えると良いでしょう。
例えば畳のヘリ
畳のヘリには、絹などの繊細な布や刺繍が施されているものがあります。
美しい反面、強度は劣ります。
また、その家の家紋が刺繍されている場合もあります。
家紋踏むことは大変失礼にあたります。
とはいえ現在の畳は、ヘリを踏んだからと言って、そう易々と傷むことはありませんし、家紋を入れている家も少ないかもしれません。
客として招かれた場合やあらたまった席などでは、畳のヘリを踏まないことは、その家の主人や、同席する相手に対し非礼な行為を見せないということが思いやりの行動だと伝えましょう。
敷居については、戸を開け閉めする際に、どうしても埃がたまりやすい場所です。
敷居を踏んでしまうと、そのあと通された部屋で埃をまき散すことになりかねません。
これは、心配りですね。
先を予測して、トラブルを回避するために考えて行動する。
そうしたことも、成長段階に応じて教えていくと良いでしょう。
和室では、畳に座布団を敷き、腰を下ろします。
床に近い空間で過ごすからこそ、「走り回って埃を立てないように気をつけようね。」と、想定される結果を示すことで、その原因となる行為をつつしむように諭しましょう。
床の間は大事な所!
床の間は元来、家の中でもっとも大切にされている場所です。
昔は位の高い人が座る一段高い場所だったことの名残であるという説があります。
席次では床の間の前がもっとも上座であるという考え方からも、床の間が大切なものとされてきたことがわかります。
現在、床の間は大切なものを飾る場所として使われます。
気を付けなくてはいけないのは、飾られている掛け軸などは高価なものである可能性が高いということです。
「この家の方が大切にしているものだから、触らないようにしようね」と教える必要があります。
逆にお客様を迎える立場であれば、小さいお子さんがいるときは、万が一のことを考えて高価なものや壊れ物を置くことは控えましょう。
お客様に気を遣わせないように配慮することも大切です。
とりあえずダメ!とにかくダメ!と言っても、必要性を伝えなければお子さんにはその真意は伝わりません。
自宅やおばあちゃんの家とちがって、客として招かれた場所では「気を付けなければいけないことがあるんだよ。」と、しっかり伝えたいですね。
これぞ和の心! 和室に根差すおもてなしを知ろう
和室には『おもてなしの心』をいたるところで目にすることができます。
敷居の意味とは?その役割とは?
敷居には、世間と家、部屋と廊下を隔てる境界の役目があります。
特別な空間へ招くことで、お客様の存在が特別であることを示しています。
ちなみに、「敷居が高い」という表現がありますね。
最近では「高級で気軽に行けない」という意味で使われることが増えていますが、伝統的には「不義理や不面目なことがあって、その方の家に行きにくい」という意味で使われます。
こうした意味が変わってきた言い回しなども、元の意味もしっかり説明できるよになっておくと、良いですね。
「敷居が高い」と「敷居が低い」|NHK放送文化研究所
室礼を知っておもてなしの心を行動であらわしましょう
日本には『室礼(しつらい)』という文化があります。
平安時代に、宴や儀式などを行う際に、庇(ひさし)や母屋に調度品などを置いて飾り付けたことが始まりと言われます。
時代が下った今では、季節感や行事に応じた調度品を床の間などに飾って楽しみます。
季節の移ろいを楽しみ、自然を尊び、その喜びを家族や訪れる方々と分かち合う。
とても素敵な文化ですね。
昔の室礼には厳格な決まりがあって、中には歴史書に細かな指定が残っているものもあります。
現代では特別な決まりはありません。
和室の無いお宅でも、出窓やカウンターなどを利用して、季節に応じた植物や調度品を置くだけでも立派な室礼です。
これからの時期ですと、お月見を想定し、大きなお皿とお団子、ススキを用意し、おうちで『室礼』を実践してみるのも、お子さんにとってよい体験となるでしょう。
参考となるサイトはたくさんあります。
ご家族やお客様の喜ぶ顔を思い浮かべながらしつらえる。
調度品や飾る植物にどんな意味があるのかを話しながらお子さんと一緒に楽しんでください。
和室のマナーを伝えることは大切なことですが、お子さんにはまず、畳の匂いや柔らかな感触を感じてもらいたいですね。
今年の夏は、ぜひ畳で過ごす時間をつくってみてください。
和室のそこかしこにある、昔の人の知恵と工夫、おもてなしの心を理解することで、和室のマナーが自然に身に着くといいですね。
心地よい人間関係を築くヒントをお届けする「Manner Up Magazine(マナーアップマガジン)」
思いやりの心を行動で表すためのアイデアが詰まったウェブマガジンです。お役に立てれば幸いです。
このマナーについては、#ソーシャルマナー #キッズマナーインストラクター
日本マナーOJTインストラクター協会
マナーOJTインストラクター 山田真由美
講師 山田真由美 blog