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「先輩・後輩」は通用しない? 外国人部下への指導育成は誰がするかが重要ポイント

2019/12/13


みなさん、こんにちは。
トップマナーOJTインストラクター石井由美子です。

日本では当たり前の「先輩・後輩」の関係。たとえ数カ月だけでも先輩であれば指導も受けるし、気も使い、忖度することもありますね。
けれども外国人にとっては、戸惑いを感じたり、不満に感じられたりすることがあります。
特に指導においては、「指導すべき立場にある人からの指導なのか」というところがポイントです。この考えを理解しておくと、スムーズな指導育成に役立ちます。

航空会社で多くの外国人と一緒に乗務していたときの失敗談、経験談、現在大学で外国人へのキャリアプランを指導する立場からお伝えします。

紙飛行機と空飛ぶビジネスマンの画像

「先輩・後輩」の考え方は、儒教の影響を受けた文化背景を持つ韓国にも存在します。また他の国々でも、スポーツの世界、軍隊などでは上下関係は存在しますが、日本のようにはっきりと、職場やプライベートにおいても「先輩・後輩」の関係が影響を及ぼすのはユニークと言えます。

また、多くの国で、「職場での地位(職位)が同じ人から指導をされる筋合いはない」という考えがあります。何年先輩であろうと同じ職位であれば、それは指導ではなく、同僚としての思いやりや助言と理解されます。
逆に言うと、「指導育成」は上司の務めでもあり、期待されるところです。

一方で、「先輩・後輩」関係について良いと思う外国人も少なくはないようです。
コミュニケーションを良くし、外国人部下を上手く指導育成していくためのポイントを3つお伝えします。

職位が同じ先輩からの助言は、指示とは受け取られないことがある

「指導すべき立場である上司」から指導されるのは当たり前ですが、職位が同じ先輩は指導の立場ではないという考えが多くの外国人にあります。

テーブルを囲んで仕事するビジネスパーソン

CA時代、中国人の新人に注意をする際、パーサーである自分が言うより、同じ中国人の先輩CAから言われたほうが受け取りやすいであろうと考え、先輩の中国人に指導を頼むと断られました。指導すべき立場にない自分が指導をすれば、中国人CAの間で「怖い人」と言う評判がすぐに広まってしまうと言い、「それはあなたの仕事です」とはっきり言われました。
初めて「指導すべき立場について、日本人は上司だけではなく、先輩のことも含めて考えるが、外国人にとってはそうではないのだ」と知った瞬間でした。その後も、何度もそういう場面に遭遇することがありました。

先輩であっても職位が同じであればあくまで対等の立場であり、一方的に指導を受け続けると、仕事に意欲が持てなくなることもあります。「アドバイスですが」「こうするといいですよ」と一言添えると受け取られやすいでしょう。
ただし、アドバイスなので、そのとおりに実行するとは限りません。あくまで助言であって、上司からの「指示」「指導」ではないからです。

上司や指導役が指導し、周りもそのことを認識する

初めて外国人を採用する場合や、外国人が少数である職場では、新人外国人に注目が集まります。指導役を決め、そして指導役も指導される側の外国人も、さらに周囲の人も、誰が指導役であるのかをしっかりと認識しておくことをお勧めします。同じ職位であっても、「この人があなたの指導役です」と上司に言われれば、双方ともに納得できます。

また、指導役以外の職場の同僚は、気づいたことをよってたかって指導することを控えましょう。
周りから「言われすぎ」になるのは日本人の新人も同じですが、文化背景が違う外国人は、慣習やマナーも含め「言われすぎ」「かまわれすぎ」になりがちです。本人は疲れ、自信をなくすかもしれません。
なにか気づいたことがあれば指導役に伝え、指導役を通して本人に伝えるほうがスムーズです。

和気藹々とした多国籍ない人々が集うオフィスのイメージ

指導役は、時間の経過とともに、その責務から離れていくことも覚えておきましょう。右も左もわからない新人外国人は指導役を頼ります。
たとえば、ベトナム人の日本での就労は伸びていますが、真面目で一途な態度は好ましく、指導する側は「お姉さん」「お母さん」のような気持ちになることもあると聞きます。
あたたかい関係となり、プライベートでも頼りにされることもありますが、相手はいつか成長し、初期の指導役はいつかその役割を終えます。

それに気づかず、いつまでもかまいすぎ、プライベートにも関わりすぎることがあります。指導役のほうでも、自分の手を離れていく気がして寂しくなることがあるかもしれません。
そのときに指導の役割が続くのか、同僚という同じ立場になっていくのかを明確にすることは、今後のコミュニケーションに大切なことです。

人として対等であり、お互いに敬意を示し、あたたかい人間関係はそのままに、相手の成長に合わせた距離感を計画的にとっていくことが、職場での良い人間関係を長続きさせていきます。

「先輩・後輩」文化について伝え、馴染むように話すことも一つの方法

「先輩・後輩」を日本の文化であるときちんと教えることによって、外国人もそれを受け止め、理解することができます。理解することで「先輩・後輩」関係のいいところも見えてくるのではないでしょうか。

「先輩が後輩の面倒を見るのは自然なことである」という日本の文化を、好ましく思う外国人もいます。また、理解ができていると、自分も先輩として遠慮せずに後輩の指導を行えます。
CA時代、ロンドン基地のCA女性が「日本人の後輩が可愛い。先輩として自分を慕って、何でも聞いてきてくれるのが嬉しい」と言っていたことがありました。

日本では、ビジネスにおいて、企業間やクライエント、お客様へのマナーとしての上下関係が存在します。社内での「先輩・後輩」関係を理解することにより、日本でのビジネスマナーが身に着くと言えます。
これは顧客満足の促進となることを伝えると、さらに納得がいくでしょう。

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「先輩・後輩」文化をナンセンス、古くさいととらえる外国人もいますが、日本らしさと捉える外国人も少なくありません。
グローバル化する社会にあって、日本人はその両方を理解した上で、良い方法を選択していくことがスムーズなコミュニケーション、部下の指導育成に結びつきます。
「誰が責任をもって指導するのか」という意識を持ち、計画的な指導を日々考えることは、日本人に対しても上司としての指導育成のスキルを上げていくことにつながっていくと思います。

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トップマナーOJTインストラクター 石井由美子

講師 石井由美子 blog

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