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板さんと語らうカウンターの客

職人の心意気に応える!カウンターでお寿司をいただくときのマナー

2020/01/10


みなさん、こんにちは。
シニアマナーOJTインストラクターの赤名麻由子です。

前回、子どもに伝えたい回転寿司のマナーについてお伝えいたしました。
>>>外食のマナー、伝えていますか?回転寿司での子どものマナー

回転寿司は、値段がはっきり表示されていて、周りもワイワイ賑やかな雰囲気なので緊張しないのが魅力ですね。
それに比べてカウンターのお寿司屋さんは、値段や雰囲気が良くわからないうえに、慣れないカウンターでお寿司をいただくなんて緊張しちゃう。お店の方に「食べ方が違う!」なんて言われたらどうしよう……と、なかなか踏み込めない方もいらっしゃるのではないでしょうか?

でも、少しのコツを知れば回転寿司だけでなく、カウンターのお寿司も楽しめるようになりますよ! 今回は大人だからこそ楽しみたい、カウンター寿司のいただき方とマナーをお伝えします。

難しく考えなくて大丈夫! 安心して美味しくいただくマナーの基本

目の前で職人の方が自分のためだけに握ってくださるお寿司。
職人の方は、お客様である私たちがいちばん美味しく食べられる状態で、お寿司を提供してくださいます。そして食べ方のお勧めも教えてくださいます。
「お味がついているのでこのままでどうぞ」「お塩で召し上がると美味しいですよ」など、職人さんの説明を聞いていれば大丈夫。

では、いただきます!となったとき、このお寿司は箸で食べるのか、手で食べるのが正解なのか、迷ったことはありませんか?
以前、職人の方に伺ったことがあるのですが、「どちらでもいいよ」とのことでした。
けれども、「お醤油をしゃりにべったり浸すとか、軍艦の上のネタがお醤油皿にいっぱいこぼれる状態を見るとガッカリする」とも。

そんな食べ方を避けるにはどうしたらいいでしょう?
握り=お醤油はネタに付ける
軍艦=箸でガリを取り、ガリに醤油を付けネタに垂らす
とすれば綺麗にいただけますね。

お寿司は手でいただくのが‟粋”だとは思うのですが、私は手で食べようとすると力の加減がうまくいかず、せっかく綺麗に握られた形が崩れてしまうと気づきました。
お店の方に「箸でもいいんですよ」と一言いただいてからは箸でいただくことにしています。

ちょっと高級なお店でお寿司を頂く図

ご自分の得意不得意があると思うので、綺麗にいただける食べ方を大事にしてくださいね。

もう一つ、カウンターのお寿司で気になるのが、お値段です。「値段が気になって何を頼んでいいのかわからない」となると、ゆっくり楽しむことはできませんね。
予約の電話をする際に予算をお伝えする、もしくは「~円くらいでお願いしたいのですが」と希望を伝えておき、当日はお任せでお願いすると、金額が気になってゆっくりできない、ということはなくなりますよ。

感動は素直に伝えよう!職人さんとのコミュニケーションのマナー

職人の方は、お客さまに「美味しいお寿司を食べてもらいたい」という思いを込めてお寿司を握り、快適に過ごせるようお店の準備をしてくださいます。そのおもてなしの気持ちが伝わるから、私たちはカウンターのお寿司に感動するんですよね。

職人の方の気持ちに応える方法は、「美味しい」「幸せ」「嬉しい」という私たちの気持ちを、言葉や態度に表して相手に伝えることです。

私が所属するJAMOIでは、‟相手に対する思いやりの気持ちを行動に表すことがマナーです”とお伝えしています。
寿司職人の方は、美味しいお寿司、清潔な店、という形で気持ちを表してくださっています。私たちの気持ちを寿司職人の方に伝えるにはどうしたらいいのでしょう?
相手がいちばん喜ぶこと、それは“承認”を伝えることです。

「“承認”をお店に伝えるってどんなことをすればいいの?」と難しく考えなくても大丈夫。皆さんがお店で感じた「美味しい」「嬉しい」気持ち、お店の思いやりを受け取った(承認した)ことをそのまま相手に伝えて差し上げればいいのです。

板さんと語らうカウンターの客

たとえば、皆さんが作ったご飯を食べる家族の顔を思い出してください。頑張って作ったご飯をどんなふうに食べてくれたら嬉しいですか?

・何も言わないけど全部食べた
・テレビを見ながら食べているから「おいしい?」とこちらから聞くと「うん」という返事だけが返ってきた

それよりも、食べて、顔を見て、笑顔で「美味しい!」「作ってくれてありがとう!」と言われたら、いちばん嬉しいですよね。
頑張って作った自分の努力を認めてもらえたような、気持ちが伝わったような気がしてこちらも幸せになります。

その幸せな気持ちを、ぜひカウンターの向こうでお寿司を握って下さった職人の方に差し上げませんか。
せっかく会話が出来る距離にいるのですもの。「美味しい」の一言を伝えるだけでお店の方とのコミュニケーションが取れて、ますますお寿司が美味しく感じられますよ。

意外な落とし穴?カウンター寿司店で注意したい身だしなみ

皆さんがカウンター寿司店のお店に入って一番に目に付くものは何ですか?
やはりカウンター、そしてその向こうで凜と佇む職人さんですよね。
カウンターでいただく寿司店では、カウンターを白木にしてお客様をお迎えするところが多くあります。

白木というのは、木の皮を剥いだ柔らかい木材で、お客様が手を置くとき肌触りが良く、お寿司が映える効果もあり、寿司店では多く使われます。
しかし白木は大変柔らかく、その字の通り明るい色味のため汚れも気になるところ。
それでもカウンター寿司の白木がいつも綺麗なのは、お店の方が丹精込めて手入れをしているということなのです。

ですから、お店への心遣いとして、カウンターに触れる手や腕につけるもので、傷をつけないように注意しましょう。
たとえば、時計やブレスレットは固いものですね。お店に入ったらそっと外して白木の柔らかさを楽しみながらお寿司をいただくのはいかがですか? 携帯電話のストラップや、スマートフォンのケースも、カウンターに置く時には気を付けたいところですが、せっかくのカウンター寿司の時間ですもの。この時だけは鞄の中に携帯を入れてお寿司の味と職人の方との会話を堪能するのはいかがでしょうか。

そしてもう一つ、伺う時の身だしなみで気をつけたいのが香りです。
パン屋で焼き立てパンの香りを楽しむように、寿司店に香るお醤油の芳しい香り、お吸い物の出汁の香り、穴子の甘い香り……、味だけでなく香りも楽しみませんか。
せっかくの香りを邪魔しないように、自己主張する香りを身につけることは控えましょう。

板さんの手元の写真

以前、学生時代の友人とランチでカウンター寿司に行ったことがありました。
いつもはお気に入りの香水を身につける彼女ですが、当日はその香りがしない。気心知れた友人でしたので、思わず「今日はいつもの香りがないね?」と聞いたら、「カウンターのお寿司には邪魔だからね」とさらっと一言。
こういう気遣いができるなんてカッコいい大人になったな、と思った出来事でした。

お会計もスマートに。言葉の意味を知って正しく使おう

美味しくいただいたら、最後はお支払いです。このときに皆さんは、「おあいそ」とは言わないでくださいね。

実は、この「おあいそ」を漢字で書くと、“お愛想”と書きます。
お客様である皆さんが使うと、「(このお店は)愛想がないので(今日は)失礼します」という意味になってしまうんです。皆様の本意とは違う意味ですよね。
お支払いのときは、「会計をお願いできますか?」「お勘定宜しいですか?」と伝えていただければ大丈夫です。

そこでお店の方が「お愛想」と返すのは、お客様に対して「(失礼があったかもしれないのに)代金をいただくなんて愛想がなくてすみません」という気持ちが込められた言葉なのです。

私は意味を知るまでは、慣れた感じを出したくて「おあいそお願いします」と言ったこともありました。でも意味を知ってからは、「おあいそ」とは伝えないようにしています。

カウンターのお寿司は敷居が高いなと感じていた皆さんのなかには、“職人の方の心意気や思いに自分が応えられなかったらどうしよう”という優しい気持ちから、お店のドアを開けられなかった方もいるのではないでしょうか。
職人の方は皆さんに美味しいお寿司を食べていただくために腕を磨き、お店の準備を整えて「早く来て下さらないかな」と待っていますよ。
コツを知ったからにはぜひカウンターのお寿司、楽しんでくださいね。

心地よい人間関係を築くヒントをお届けする「Manner Up Magazine(マナーアップマガジン)」
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このマナーについては、#ソーシャルマナー 

日本マナーOJTインストラクター協会
シニアマナーOJTインストラクター 赤名 麻由子

講師赤名 blog

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