ところ変わればマナーも違う!ご当地ルール~福岡編~
2022/01/14
みなさんこんにちは。
マナーOJTインストラクターの安徳 美妙です。
例えば皆さんが海外へ旅行に行くとします。
まず準備されることといえば何でしょうか?
飛行機やホテルの予約、レストランや観光地の下調べはもちろん、旅先で思わぬトラブルを回避するために、信仰に関係する習慣や、日本には馴染みがない例えばチップの習慣など。
現地の文化や習慣の下調べは、多少とはいえされる方が多いことと思います
しかし、国内旅行ならそのような下調べや心の準備をするでしょうか。
初めて訪れる土地で、文化や習慣の違いに「え?!」と驚いたという方もいらっしゃるかもしれません。
春を前に、進学や就職で住み慣れた土地を離れる方は少なくないと思います。
新しい土地に旅立つ前に、マナー講師の安徳美妙が、福岡のローカルルールを基に、新しい文化に接する際に心がけたい、心もちについてお伝えいたします。
私は、ユニバーサルマナーを学んだことをきっかけに、自分のものと違う文化や習慣を知ることもマナーの第一歩だなと思うようになりました。
長細い形をした日本は、地方によって気候も違えば、『だし』の味も地域で違います。
私の暮らす九州では当たり前だと思っている文化も他県の方からすれば意外性があるのかもしれません。
今回はそんなご当地ローカルルールについて、私の住む福岡を例にお伝えしてします。
何気ない暮らしの中にも存在する差異を認めることで、他者に寛容になれると良いですね。
福岡ローカルルール① 生活のお約束編
他県から福岡に引っ越してこられた方がよくおっしゃるのが、福岡の「ゴミ出し」についてです。
ドラマなどで、お父さん役の俳優さんが朝、ネクタイにスーツの出勤スタイルでゴミ出しをする様子が描かれることがあります。
平日の朝の風物詩と言っても過言ではないほど、ゴミ出しはすっかり朝の光景のひとつとなっているかと思います。
ところが福岡市をはじめとする福岡県内の多くの自治体が『ゴミ出しは夜』にします。
これは、交通渋滞の少ない夜間にゴミを収集するというのが主たる目的ですが、他にも、明け方に活発になるカラスの被害を避けられるというメリットもあるそうです。
何より朝の忙しい時間帯でなく、夜のうちにゴミ出しをできるというのは住民にとっては本当にありがたいルールです。
朝にゴミ収集が行われる多くの地域ではマナー違反とされる夜のゴミ出しですが、福岡では夜に出すことこそがルールにかなっているのです。
驚きのギャップですよね。
福岡から出て、これから他県で暮らされるという方。
ゴミ出しの時間には要注意しましょう!
福岡ローカルルール② 敬語編
私は大学入学を機に上京し、卒業後も10年近く東京で働きました。
その後福岡に戻ったので、福岡で初めて働いたのは30歳を過ぎてからでした。
福岡で働きはじめた当時、私が最も不思議に感じたのは、職場の方々の言葉遣いでした。
もちろんビジネスの場ですので、社内でも取引先との商談でも敬語で話します。
ですが、その敬語がすごく独特でした。
特徴的なのが『~ですね』です。
このコラムをお読みの方は、「普通の丁寧語では?」と思われるかもしれません。
恐らく福岡県にお住いの方、以外の方には「~ですね」は、やや特徴的な使われ方をしています。
ここで一例を紹介します。
取引先の営業担当者から私にかかってきた本当の電話です。
(一部抜粋です)
「あのですね、実は今朝ですね、工場から○○と言われたけん(=言われたので)ですね…」
という具合です。
これを標準的な言葉に直しますと、
「あのー、実は今朝、工場から○○と言われたので…」
という内容です。
なぜか語尾に「~ですね」をつけがちなのが福岡の人々です。
また、「言われたけんですね」のように、敬語にも方言が混じるのも独特で、私は最初なかなか慣れませんでした。
どこの方言もそうだとは思いますが、話者の年齢が高くなるにつれ、地域独特の言い回しは色濃くなっていきます。
マナー講師という立場上、敬語についてアドバイスさせていただく機会があります。
地元福岡で開く講座では、この「~ですね」が一般的な丁寧な言い回しだと思っていらっしゃる方もいます。
県外の方とのやりとりも活発な時代です。
生まれ育った土地を離れられる方
新しい土地で新しい生活をはじめられる方
その機会にご自身の言い回しは、一般的かローカルなのか?
新しい人間関係をはじめられる際に、言葉遣いチェックをされてみると、話題の端緒となって良いかもしれませんね。
福岡ローカルルール③ 食文化編
先述した通り、大学入学を機に上京した私には、東京で暮らして初めて「あれって地域独特だったんだ!」と気付くこともありました。
特に食に関する文化のギャップは色々とありました。
例えば、福岡など九州エリアでは、コンビニで肉まんを買うと酢醬油がついてきます。
私は、小さい頃から当然のように肉まんには酢醬油をかけて食べていたので、東京で肉まんを買ったときに酢醤油をもらえなかったときは、店員さんの付け忘れかと思ったほどでした。
ちなみに関西ではからしをつけると聞いたことがあります。
肉まんの付属ソースに次いで驚いたことは焼き鳥店のメニューです。
福岡では、人口あたりの焼き鳥店の店舗数が全国1位と、焼き鳥が大好きな県なのです。
参照元:鳥料理店の登録件数NO.1は福岡県!
~「鳥料理店・焼鳥店」の都道府県分布と「若鶏」の年間出荷量~|タウンページデータベース
焼き鳥が大好きと書きましたが、どこのお店のメニューでもメインといえば「豚バラ」です。
そもそも鳥ではないのですが、なぜか福岡では焼き鳥と言えば豚バラで、福岡県民はこの豚バラをこよなく愛しています。
ちなみに『焼き鳥』の付けあわせに、甘酸っぱいタレのかかったざく切りのキャベツがついてくるのも定番です。
でも当時の私は、それらが福岡独特の食文化であることを予め知りませんでした。
もし、それが福岡だけのローカルカルチャーだと知っていれば…。
コンビニの店員さんのミスを疑ったり、豚バラやキャベツの付け合せが焼き鳥店で出てこないことにあそこまでガッカリしたり…。
そんなことはなかったはずですよね。
自分が慣れ親しんだものが一番!という気持ちになってしまうのは分かりますが。
それぞれの地域には、それぞれの文化があります。
進学や就職で地元を離れて暮らすようになって、付き合い始めたお友達と、育った環境で慣れ親しんだものが違うと分かったとき。
そこに優劣はなく、むしろ、その違いを新たな出会いとして楽しめると、良いですね。
出身地がさまざまな人同士が集まると、ときとしてご当地ローカルルールの話題となることがあります。
特に食文化は各地域の特色が出やすい部分ですね。
関東と関西の出汁対決などもよく話題にされます。
全国チェーンのレストランを経営している会社の方に、同じメニューでも愛知、岐阜あたりを境に東西で味を変えているとお聞きしたこともあります。
それぞれのお国自慢で盛り上がるのも一興です。
その際ぜひ、他県のローカルルールやその由来にもぜひ興味を持ってみてください。
ご自身の地元と違う文化や習慣を知ることは、より多くの人を理解することにつながり、ひいては他者を思いやること、思いやって行動するという『マナー』につながります。
さまざまな地域について知識があれば、出会ったばかりの相手との会話の糸口にもなりますね。ご自分の出身地の話題をされ、理解を示されると嬉しいものです。
認められたい。認めてもらえるとうれしいという感情は、心理学用語で承認欲求と言います。
理解して、認める。
相手の承認欲求を満たす会話術で、春からの新生活を素敵にスタートしてくださいね。
そして、福岡に来られる方!
このコラムがお役に立てば幸いです。
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