良いパフォーマンスを引き出すグローバルスタンダードの指示出しとは~外国人部下を持つ上司の心得~
2019/11/01
みなさん、こんにちは。
トップマナーOJTインストラクターの石井由美子です。
日本人と異なる価値観や文化的背景を持った外国人とうまく仕事を進めるには、まず相手が受け取りやすい指示をすることが大切です。
前回は「わかりやすい指示」として、全体像を伝えてから詳細について説明する「Whole Part法」についてお伝えしました。
>>>グローバルスタンダードな指示出しで仕事をスムーズに~初めての外国人部下を持つ上司の心得
今回は、相手が心理的に受け取りやすく、またモチベーションが上がり、自ら考え、動くことのできる指示の出し方をお伝えします。CAとしていろいろな国の多くの外国人と一緒に乗務していたときの失敗談、経験談についてもお話しします。
日本では、階層的に、上司からの一方的な指示を部下が受け止め、上司の意図を汲み取りつつ、指示通りに業務を遂行することが多いと思います。けれども海外では、上司と部下は基本的に対等であり、上司の指示に協力するという考え方があります。
高圧的な態度での指示は、ときに相手のやる気をなくさせ、上司としての評価が下がることすらあります。これでは良いパフォーマンスは期待できません。
コミュニケーションを良くし、スムーズに仕事をしてもらうためのポイントを3つお伝えします。
一方的な細かい指示は不満につながる。目的は何かを考え、伝える
一方的に命令されるのは、「子ども扱いされている」「信用されていない」と受け止められることがあります。そのため、一方的に指示を受け続けると、仕事に意欲が持てなくなる人もいます。
完璧主義は捨て、重要なポイントを絞って、シンプルに伝えてみましょう。
CA時代、「日本人CAと同じ品質で仕事をしてほしい」という思いから、なんとなくチャラい感じのロンドンステーションの男性CAに、次から次へと指示をしました。言わないとやらないように思ったのです。
その結果、彼から干渉しすぎだと言われました。「ぼくたちの文化と日本の文化は違う」とも。
「でも実際、ちゃんと言ったようにやってないですよね。あなたは日本の航空会社のCAでしょ?」とやり合い、喧嘩になりそうになりました。このときは頭にきたものですが、あとあと何かいい方法はなかったかと考えるようになりました。
さぼり気味なところは良くないことだとは思いますが、確かに日本人にはない良いところも実はあったと思います。フレンドリーに話しかけるイケメンの彼に接客されると、日本人のお客様も楽しそうでした。
目的は「お客様に快適に楽しく過ごしていただくこと」と考えれば、細かい部分はこちらでカバーして、補い合えることができるかなと思い直したのは、ずっと後のことです。目的を達成するなら、プロセスは違うものもあり得るという柔軟な発想を持つのも良いのではないでしょうか。
上下関係ではなく、チームの意識で。協力を求める態度を示す
目的に向かう「チーム」だという考え方を持って指示すると、受け入れられやすくなります。「仕事なのだから協力は当たり前」というのは日本人らしい考え方なのかもしれません。
指示するということは、あなたの意のままに、相手をコマのように動かすことではありません。相手のやる気を出させて良いパフォーマンスを生み出すためには、ちょっとしたやる気スイッチを押す指示の仕方が求められます。
チームだと思うと相手への態度も変わります。
「これ、やってください」だけでなく、笑顔で「お願いします」と付け加えましょう。頼りにしている、期待しているということを伝えましょう。
言われたことを単にやるだけより、期待されて期待に応えるほうがやりがいを感じるのは、外国人も日本人も同じです。「いやいや、期待するほどの仕事じゃなくて雑用だから」なんて思わないほうが良いでしょう。
笑顔で指示を出せば、相手も笑顔でパフォーマンスを発揮してくれます。
CA時代も「石井サン、あれもやっておいたから!」と、ドイツ人CAが指示されていないこともやってくれたことがありました。そのときの楽しそうな、得意そうな表情はとてもチャーミングでした。期待していることを伝えましょう!
報告をしてきたら、感謝を伝えるとともに具体的な行動を褒める
報告の際、相手に「ありがとうございます」と言うことは当たり前。さらに具体的に「こういうところが良かった、助かった」と加えることがポイントです。
相手を認めることで、お互いの関係が良くなり、次の仕事への意欲もわきます。気持ちよく仕事をすることができますね。
前回の記事で、外国人には「報告」の習慣があまりないことをお伝えしましたが、「期待されていること」であれば報告をしてきてくれます。「とてもヘルプフルです。またお願いしますね」と言ったときの相手の笑顔でこちらも元気になります。
当たり前のことでいちいち褒めるの?と思わず、やってみることでいい人間関係も築けるのではないでしょうか。
受け止めやすい指示とは、「メッセージとして内容がわかりやすい」ことと同時に、「心理的な受け取りやすさ」というものがあることをお伝えしました。
ちょっとした気遣いを添えた指示を重ねていくことが、周囲の人への思いやりとなり、コミュニケーションのよい職場につながっていくと良いですね!
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講師 石井由美子