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褒めは心の報酬! ~的確なフィードバックでモチベーションアップ!~

2020/05/08


みなさん、こんにちは。
トップマナーOJTインストラクターの石井由美子です。
外国人部下は上司から仕事ぶりについて褒められ、フィードバックされることを求めています。ところが日本人上司は部下に対して、不足の指摘はできても、褒めることはちょっと不得手な方が多いかもしれません。それはなぜでしょう。
ますます進む多様化の中で、上手に部下のモチベーションをアップするフィードバックについて、国際線CAとして外国人と仕事をしていた経験を経て、現在は大学で留学生にキャリア指導をしている石井由美子がお伝えします。

フィードバックとは何か

フィードバックとは、部下の仕事ぶり、成果に関して自分の意見を効果的に伝えることを意味し、アメリカで生まれた文化です。
アメリカの職場にはさまざまな背景を持つ人が働いていて、それぞれの常識と呼ばれるものが大きく異なります。そのため、仕事を進めるためには、分かりやすいい言葉遣い、明確に伝わる方法でもって、その都度意思疎通しながら進めていく必要があります。
『言わなくても通じるはず』『察してくれるはず』という、ハイコンテクスト文化の日本とは異なり、『発言しないのは、考えがないから』とさえ捉えられてしまうこともあります。
これが上司と部下の関係であれば、「上司からフィードバックがないのは、部下である私たちを無視しているから」と受け取られ、険悪なムードになってしまうことも往々にしてあります。そうした残念な誤解を招かないために、フィードバックを活用していきましょう。
フィードバックには褒める目的のものと、問題点の指摘や注意することが目的の二種類があります。

誉め言葉の書かれたノートの写真

なぜ日本人上司は褒めないのか?文化背景を考える

日本人の上司は、部下の仕事について問題がなければ何も言わないことが多いのではないでしょうか。それは「仕事は上手くできて当たり前。わざわざ褒めることではない」との考えがあるからでしょう。
これは、一昔前に(もっと前でしょうか!?)流行ったキャッチコピー『男はだまって』等にも代表される、不言実行がかっこいい、男らしさの象徴として、根強く意識の中にあるからでしょうか。
日本人の部下であれば、上司から何も言われなければ「あー、よかった。問題がないのだ」と、ほっとするかもしれません。
また、日本の企業では、大きな仕事を任せることや昇進によって、相手を評価し、期待していることを示そうとします。これも日本人部下であれば「見ていてくれていたのだ!」と感激して受け止めるでしょう。
けれども、これらは多くの外国人にとってはわかりづらいことです。
「何をしても全く褒めてもらえない。自分が提案したことがどう成果に結びついたのかが分からない」とアメリカ人の女性から聞いたことがあります。

その後彼女は、大きなプレゼンを任されたそうですが、当初は上司の意図がつかめず、とても難航したそうです。

しかし、そうした経験を通して、彼女も『これが日本式なのだ』と自身を納得させていたようでした。

「苦言を呈されず、大きな仕事を任されるなんて、評価されていることだよ!」
日本人同士なら、多分こうだろう。きっとそう思ってるはずと『想定』で進む人間関係も、違う文化で育った人には、理解しにくい、見えにくいバリアーを感じるのだなと、アメリカ人の彼女の話を聞いていて感じました。

褒めることは心の報酬!! 褒めるフィードバックの2つのポイント

仕事を通じてキャリアアップしたいと考える多くの外国人にとって、褒められることは心の報酬であり、相手からの感謝であり、上手くやったと思ったときには、必ずもらえるはずの報酬です。ぜひ、この『心の報酬』を的確に与えて、のびのび働ける職場環境を築ける有能な上司になりましょう!

日頃から周囲に関心を持ちましょう

日本での評価は、人事考課の際に面談で行うという方法が一般的ですが、他の多くの国では、日常的なフィードバックという形が求められます。
部下に何を求め、どんな成果が出ているか。明確な評価基準をもち、部下の成長を願い、促すという心構えが、常日頃から上司であるあなたにあるということが要求されます。
そのためには、周囲に関心を持ち、仕事の取り組み具合はどうか、目的の達成度合いはどうか、人柄や行動はどうかなど、部下を多面的に見る視線をもちましょう。
一方で、部下の日々の提案や報告がどのような結果に結びついているかを丁寧に伝え、その成果を『褒める』という形で伝えるようにしてみましょう。そうすれば、褒める機会は増えていくことでしょう。

この、褒める目的のフィードバックは日常的な業務に対してでも構いません。些細なことでも発見をし、部下へのフィードバックとして活用してみましょう。

不足部分ではなく 良いところに着目

ついついダメな点に目が行きがち、指摘しがちですが、褒めるフィードバックです。良い所に着目する。つまり、視点の切り替えが重要となります。
私は、大学で留学生を対象にキャリアガイダンスの講義を行っています。そこで教えていたあるネパール人学生へのフィードバックで、今も忘れられない、大きな反省となっていることがあります。
留学生にとって、日本語を書くことはとても難しいので、普段から私は、ゆっくりと丁寧に書くよう指導していました。
ある日、彼から「僕の字、上手くなりましたか」と講義のあとに聞かれました。私はもっと上手くなってほしいという思いから「もう少し頑張らないとね」と言いました。
すると、彼の顔から人懐こい笑顔が一瞬にして消え肩を落として私のもとから去っていきました。がっかりした彼の表情は今でも忘れられません。
彼の字は、少し前に比べると、ずっと良くなっていました。そのことを考えると、人を伸ばすのには、こういう対応ではいけないな。もっと他にかける声があったのではないかと、申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。

その後の講義で彼のレポートを手にした際に、私は褒めるフィードバックを行いました。
「きれいな字になりましたね。練習しているのね」
その後、彼の文字はよりきれいに読みやすくなっていきました。

足りないところ、不満なところは考えなくても気がつく、目に止まると言われます。努力して進歩している部分、良い部分を見逃さず相手に伝える。
褒めるフィードバックは相手のモチベーションをアップし、さらなる成長へと向かわせます。
褒めるフィードバックは「良かったよ」というだけではなく、どのような行動がどのような良い結果をもたらしたか、次に必要となる努力は何かを具体的に伝えるようにしましょう。

ややこしい歯車を描くイメージ

相手に自信と達成感、自己肯定感を感じさせ、モチベーションの上がるフィードバックは、相手への関心や感謝なしには生まれません。これは人への理解や成長を促すことで上司であるあなた自身をも豊かにするスキルといえます。
ぜひ、日々の業務の中で『褒めるフィードバック』心がけてみてください。

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このマナーについては、#インバウンドコーチⓇ #英語接遇ベーッシク認定講座 #ソーシャルマナー

日本マナーOJTインストラクター協会
トップマナーOJTインストラクター 石井由美子

講師 石井由美子blog

外国人部下への対応として、よろしければ以下の記事もご覧ください。

グローバルスタンダードな指示出しで仕事をスムーズに~初めての外国人部下を持つ上司の心得

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