外国人が期待する上司像とは? キャリアパスを示せる理想の上司の在り方
2020/04/03
みなさん、こんにちは。
トップマナーOJTインストラクター石井由美子です。
日本における外国人労働者数は、令和元年10月末時点で165万8,804人となり、過去最高となりました 。国籍別では中国が最も多く、次いでベトナム、フィリピンの順となっています。
出典:厚生省|「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和元年10月末現在)
国は多様ですが、彼らには共通して、「日本式マネージメント」に対してモチベーションが上がらず、不満に感じてしまうケースがあります。
外国人に限らず、人生100年のキャリアを考える昨今の日本人にとっても、部下に対して段階的、計画的なキャリアパスを示す上司の能力は必要とされます。
相手を尊重し、コミュニケーションをとって、相手の成長を願い、促そうとする考え方が最も重要です。
外国人、日本人を問わず、部下に長く働いてもらうために、「外国人が期待する上司像」について知ることは重要です。
航空会社で外国人と一緒に乗務した経験や、現在インバウンド企業研修、大学で外国人へのキャリアプランを指導する立場からお伝えします。
日本で見られる2つのマネージメントタイプ
外国人との摩擦となるものに、日本人管理職の「日本式マネージメントスタイル」が考えられます。これには大きく二つあります。
一つは、部下のすべてをコントロールしたい「マイクロマネージメント」。
もう一つは、部下の仕事に関与せず任せきり、だんまり系の「ハンズオフマネージメント」です。
さらには、いわゆる「丸投げ」をしておきながら、部下が出してきた提案に対してことごとく注文をつけるというミックス型もありますね。
日本人部下は、上司の意向をあれこれと忖度し、様子を伺いながらことを進めますが、このようなマネージメントでは、外国人は不満を感じ、早々に転職を考える準備を始めてしまうかもしれません。
CA時代のエピソードです。
外国人CAは昇格が望めない立場でした。モチベーションアップのためにと、コンパートメント責任者がその時限り、ロンドンベースCAに「今日はコンパートメント責任者として、あなたの好きなようにやってみて」と指示しました。
彼は張り切り、誕生日のお客様にシャンパンを1本プレゼントしました。彼の権限で自由にできると思ったのです。
それを見たほかのCAはびっくり。機内のお酒は保税品であり、お持ち帰りは厳禁です(国際線の機内サービスで出されるお酒は、税法上、乗客による機内からの持ち出しが禁止されています)結局、お客様に事情を説明し、シャンパンはグラスサービスとして提供したと聞きました。
そのときは「任せたらとんでもないことするわ!」ということになりました。確かに業務知識の欠如という彼の落ち度はありますが、具体的にどの範囲内で、何を自由にしたら良いのかという説明のない思いつきの指示がこれを招いたかと思います。
なにか指示をするときには、相手のレベルや理解度を確認し、自由な裁量の範囲を示したうえでサポートしていくことが、部下の望むマネージメントです。
自分の将来をイメージさせてくれる上司が理想
この仕事を通じて、どのような成長が見込め、1年先、3年先に自分はどうなっているのか、イメージできることが外国人にとっては重要です。
日本企業にはゼネラリストを養成する傾向があるため、専門性にこだわらずジョブローテーションすることが少なくありません。これが外国人にとって自分の将来が見えなくなり、仕事に対して失望する理由の一つとなります。
あるインド人男性から、日本企業でようやく慣れた頃、理由も示されず専門外のジョブローテーションをされ、「この部署での自分の仕事は認められなかったのか」と悩んだと聞いたことがあります。
また、中国には「発展空間」という言葉があり、「自分が企業内で成長する将来の機会、可能性」を意味します。それが感じられなければ魅力を感じなくなるのです。
そもそも多くの外国には「終身雇用制度」はほぼなく、3年から5年ほどでキャリアアップの転職をしていく傾向があります。転職までの期間にどんなスキルやポジションを得ることができるかは、彼らにとって関心の高いことです。
とはいえ、社内の仕組みをすぐに変えるのは難しいでしょう。
また長く勤めてほしいと思えば、外国人に「就職」ではなく「就社」の概念をしっかりと理解させ、配属・異動 等へ意識のギャップを防ぐことが重要です。
そして、「ジョブローテーションを中心としてキャリア開発」をしていくという点について、認識を摺り合わせましょう。
上司に期待する姿はスポーツチームのコーチ
日本人は上司を、学校の先生、または主従関係の先輩に近い存在のように捉えているかもしれません。
外国人は、「自分の時間を提供している仕事の場」では、見返りとして成長を促すスキルを上司に求めます。それはアスリートの能力を見極め、成長させてくれるコーチのようなイメージです。
では、どのようなスキルが必要なのでしょう? 2つお伝えします。
①自分の能力を生かしてくれる。
一人ひとりの能力を最大限に引き出し、そのための課題と適切なアドバイスをタイミングよく、適切に行えることが上司に期待されます。
厚生労働省が行った日本企業に勤める外国人に対するアンケートでは、「上司が仕事の指示をするときに、何をすればよいのか不明確でわかりにくい」という質問に不満である(不満であるががまんできる、不満に思うので改善するために働きかける、不満に思うのでこのままでは転職を考える)と回答したのは37.7%に上りました。
出典:厚生労働省|「高度外国人材活用のための実践マニュアル」
②フィードバックを与えてくれる
だんまりはだめ。肯定的なフィードバックも否定的なフィードバックも、日常的に、かつ総括的に与え、人事評価の際も「処遇のためだけの評価」ではなくて「本人の成長のための評価」 であることを強調して理解してもらうことです。
計画的で明瞭な指示を与えること、その成果が相手の成長やキャリアアップにつながること、成長を願っていることを常に伝えること。
これらを意識することが、上司としてのあなたのスキルを上げ、外国人のみならず、日本人にとっても理想の上司となっていくのではないでしょうか。
次回はフィードバックの方法についてお伝えします。
外国人部下への対応として、よろしければ以下の記事もご覧ください。
参考:
・千葉祐大著 『異文化理解の問題地図』 技術評論社 2019年
・ロッシェル・カップ/増田 真紀子著 『外国人部下と仕事をするためのビジネス英語』 語研 2005年
・エリン・メイヤー著 『異文化理解力』 英治出版 2015年
・厚生労働省|高度外国人材にとって雇用管理改善に 役立つ 好事例集
心地よい人間関係を築くヒントをお届けする「Manner Up Magazine(マナーアップマガジン)」
思いやりの心を行動で表すためのアイデアが詰まったウェブマガジンです。お役に立てれば幸いです。
このマナーについては、#インバウンドコーチⓇ #英語接遇ベーッシク認定講座 #ソーシャルマナー
日本マナーOJTインストラクター協会
トップマナーOJTインストラクター 石井由美子
講師 石井由美子blog