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心を掴むモチベーションアップの指示出し~外国人部下を持つ上司の心得~

2020/01/24


みなさん、こんにちは。
トップマナーOJTインストラクター石井由美子です。

日本人は「言われたことは、わからないなりに素直にやる」ということが美徳とされることがありますが、外国人は「なぜそれをやるのか」と知りたがることがあります。

そのとき私たちは明確に答えることができるでしょうか。
「なぜWHY」から伝えることで、やる気を上げる指示出しについて、航空会社で外国人と一緒に乗務した経験や現在大学で外国人へのキャリアプランを指導する立場からお伝えします。

みんなで構想を練る様子

外国人部下への指示出しとして、これまでに「わかりやすい指示」と「心理的に受け止めやすい指示」をお伝えしてきました。

>>>グローバルスタンダードな指示出しで仕事をスムーズに~初めての外国人部下を持つ上司の心得

>>>良いパフォーマンスを引き出すグローバルスタンダードの指示出しとは~外国人部下を持つ上司の心得~

今回はサイモン・シネック氏が唱えた「ゴールデンサークル理論」を中心に、「モチベーションアップの指示」についてお伝えします。

モチベーションアップがする「ゴールデンサークル」とは?

サイモン・シネック氏の唱えたゴールデンサークル理論は、優れたリーダーシップと目標達成のための巻き込み力を唱えたものですが、仕事における、なにげない指示にも応用することができます。
【参考】サイモン シネック: 優れたリーダーはどうやって行動を促すか | TED Talk

まずゴールデンサークルのご説明をします。
ゴールデンサークルとは、
【WHY(なんのために)HOW(どのようにして)WHAT(なにを)】の順で相手に伝える方法です。
「人は何を(WHAT)ではなく、なぜ(WHY)に心を動かされる」とサイモン氏は言います。

通常、業務における指示や目標を告げるとき、わたしたちは、【WHAT(何を)→HOW(どのように)】を伝えるのみにとどまり、WHY(なんのために)は伝えないことが多くなっているのではないでしょうか。

GoldenCircle

(ゴールデンサークル図:わたしたちはWHATから始めることが多いですが、ゴールデンサークルでは逆です)

わかりやすい例を挙げてみましょう。これは研修などでもよくお話しする「ブロック積みの仕事の話」ですが、ゴールデンサークルにあてはまると思います。

例①モチベーションのあがらない指示

「レンガを積む仕事をお願いします」WHAT
「2種類の色があるので1つずつ交互に積んでください」HOW

例②ゴールデンサークルを用いた指示

「ここに、子どもたちが安心して教育を受けられる学校を建てるんです」WHY
「この2種類の色のレンガを交互に積むと、きれいな模様になるでしょう」HOW
「ですからレンガを積む仕事をお願いします」WHAT

いかがでしょうか。
例①に比べ、例②のほうがレンガ職人のやる気が上がるのではないでしょうか。さらに例②では、指示されたこと以外にも自分なりに考え、速くて綺麗なレンガ積みの工夫もするかもしれません。

そして大切なことは、その仕事に自分が貢献しているという気持ちや誇りにつながることもあるということです。
例①では指示は相手への一方的なものですが、例②では一つの目標に向かう「US」、チームのイメージも伝わりませんか?

WHYから始め、その仕事の意義を丁寧に伝えよう

「いちいち伝えなくても、何のために(WHY)やっているかくらい、わかるだろう」と思うことがあるかもしれません。
けれども、文化背景が違う外国人や、日本人でも新人であれば、自分が思うほど自分の考えが伝わっていないこともあるのです。また、WHYを伝えないと、独りよがりな指示になっていることがあるかもしれません。

人差し指でポインティングする女性の写真

わたしのCA時代の経験をお話しします。
ヨーロッパ線のエグゼクティブクラスでのことです。
キッチンの壁には座席チャートが貼ってあり、ここにお客様のリクエストや召し上がったもの、飲み物などを書くことになっていました。わたしはまとめ役として、コーヒーをオーダーしたお客様には「B(ブラック)、S(シュガーのみ)」などと書くようにほかのCAにお願いしていました。
目が回るほど忙しくなる時間帯に、「B、S」などの記載は面倒なことでした。

日本人CAは黙ってそのとおりにしますが、「なぜ?」と外国人CAに聞かれました。そのときの彼女は、「この忙しいときに面倒くさい」という表情でした。
欧米の人は、自分の意見を伝えるのは当たり前のことだという教育を受けています。
日本人上司は反発しているのかと、どっきりしてしまうことがありますが、彼らにとって、自分が納得できない、不合理だと思ったときに質問することは当然のことです。

「これはマニュアルにはないことですが、次にコーヒーを希望なさったときに、お客様のお好みでお出しできるからです。どのCAにいつ頼んでも、自分の好みのものが出されたら、嬉しいのではないかと思います。スマートなサービスでしょう?」そのときの彼女のパッと輝いた顔を思い出します。
「それはそうね!それにいちいち聞くより合理的ね」
今思えば、わたしは「チャートに書く」というWHATのみ伝えていたのです。

WHYが曖昧ではないか、リーダーとしての自分も見直す

わたしたちは仕事の中で、多くの指示を出し、また指示を受けます。
何のためか深く考えないまま事務的に指示を出したり、指示を受けたりしていることもあるかもしれません。
WHYを考えると、ときにそのWHAT(指示・仕事)は不要なことすらあるかもしれません。上司本人が意味がわからずに出した指示を、部下が情熱を持って遂行することは難しいでしょう。

一方、自分の出す指示のWHYは何だろうと常に考えることは、目的意識を明確にしていきます。そして、どのように(HOW)したらよいか、どのような仕事や指示を(WHAT)誰が最もふさわしいのかという、リーダーとしての自分にぶれないものを築いていくのではないかと思います。

WHYを伝えることは「想い」を伝えることでもあります。その「想い」に共感し、ときに触発されたときに人は動くのだとサイモン・シネック氏は伝えます。
このことは外国人に限らず、部下への、そして自分自身へのモチベーションアップにも結びつくのではないでしょうか。

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なぜそれをやるのか、WHYはそれをやることの意義です。
WHYを考える癖がつくことで、リーダーとしての目的意識、論理的に考える習慣が身につき、適材適所のチームビルディングの思考の手助けにもなります。
普段なにげなく出している指示に、「こういう目的や意義のために、あなたにこのようにこれをやってほしい」という言葉を取り入れてみてはいかがでしょうか。

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このマナーについては、#インバウンドコーチⓇ #英語接遇ベーッシク認定講座 #ソーシャルマナー

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トップマナーOJTインストラクター 石井由美子

講師 石井由美子 blog

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