接客の現場に外国人部下を迎えたときに読んでおきたい ~部下のやる気を育てるフィードバック~
2020/06/12
皆さんみなさん、こんにちは。
トップマナーOJTインストラクターの石井由美子です。
自粛要請も解除され、営業を通常通りに再開されるお店も増えてきましたね。街に活気が戻るのは嬉しいことです。
日本では、フェイストゥフェイス、対面で接すれば分かり合えるという文化があります。しかし、外国から来たスタッフたちもみなそうとは限りません。
中には、文化の違い故のささいな行き違いから、クレームに発展して、困った!という嘆きの声も聞かれます。
また、会話でのコミュニケーションを重んじる外国人スタッフの中には、上司であるあなたからのフィードバックという形での指導を期待している方も少なくないでしょう。
それが例え、ダメな行動に対する指摘のためのフィードバックだったとしても、適切なフィードバックは、外国人スタッフのモチベーションアップや成長につながります。
航空会社で外国人スタッフと仕事をしてきた経験をもとに、異文化交流の側面から経済活動の活性化をインストラクションしているインバウンドコーチ®として更に、大学で外国人留学生へのキャリア指導も行っている私が、外国人をやる気にさせるフィードバックに欠かせない3つのステップをお伝えします。
STEP1 いつか自分で気づくだろうと勝手な期待をしない
あなたのお店の外国人スタッフが望ましくない行動をしているとき、日本人上司に多い傾向として「いつか自分で気づくだろう」と自発的に改善していくことを期待します。
そして、当の本人がいつまでたっても気がつかないと、失望したり、上司自身のストレスとなってしまったりすることがあります。
コンテキスト、空気を読む日本文化と違い、多くの外国人は言葉ではっきり伝え合うコミュニケーションをはかります。
上司からのアドバイス・指示出し等を求める一方で、そうしたものが得られないときは、自らの行動に問題ないと考える傾向があります。
この様なときには、フィードバックを活用しましょう。
職場におけるフィードバックは、評価基準や他者の感想などをもとに、業務を見直す目的でおこないます。
あなたのお店の外国人スタッフに、問題と思われる行動が見られた場合は、まずその問題点について明確に伝えましょう。
フィードバックでは、褒めたり、指摘や注意をしたりします。ですが、指摘や注意は部下を責めることが目的ではありません。そしてもちろん、上司であるあなたの怒りや失意を伝えたりすることもフィードバックの目的ではありません。
相手の自己効力感を低下させず、これからも意欲をもって働いてもらうのが、上司であるあなたの役割です。あなた自身の指摘に対する負のイメージをまずは払拭していきましょう。
分かりやすい指摘や納得できる説明を受けた外国人スタッフは、自身を成長へと導くために支援してくれる上司だと、あなたの指摘を受け止めることでしょう。
外国人スタッフの納得性を高めると同時に、分かりやすく伝えることが上司であるあなた自身のイライラやストレスも軽減させます。
STEP2 理由を尋ね 客観的に観察し 論理的 具体的に指摘しよう
問題行動を起こした外国人スタッフと話す前に、何が問題点だったのかは、上司であるあなたがまず明確に理解しておくことが重要です。
「○○するなんて、あり得ない!」と感じたら、なぜあり得ないのか、どうだったら良かったのか、具体的に説明できるように頭の中を整理しましょう。
多くの問題は行動そのものにあります。あなたにとってはあり得ない行動でも、その外国人スタッフにとっては理由や思いがあってのことかもしれません。
その理由や思いが行動とうまくマッチしていないことで、結果として問題行動ととられてしまう。そんな不仕合せがあるかもしれません。そこに気がつければ、行動を修正でき、成長を望めます。
こんなことがありました。
満席の飲食店でやっと座れた席で、さぁこれから食事をしようと思ったときに、外国人スタッフから無理やり別の席に案内された。不愉快だ!とのお怒りの言葉を、お客様から受けました。
そのお客様はご家族6人でお越しで、満席だったため3人ずつに分かれてお席にお通ししていました。
納得して分かれて座って、オーダーも済んだのに、スタッフから突然「あちらへご案内します」と移動を促されたそうです。
その外国人スタッフはなぜそんなことをしたのか。それには理由がありました。
「離れて座っている家族を一緒に座らせてあげたい、ここでの食事を楽しんでほしい」彼女なりのそんな思いやりから出た行動だったのです。
けれども、その意図をお客様に告げずに、一方的に別の席に案内するという行動に移してしまいました。またおそらく緊張していたのでしょうか、彼女には笑顔もなかったため、店の都合で追い立ててしまったような、そんな印象をお客様に与えてしまったことが分かりました。
この件の問題は何でしょう。
「席が空きました。みなさんご一緒できるようご案内しましょうか」とまず尋ね、選択を相手に委ねなかったことが一番の問題だと思われました。
日本語で、ちゃんと伝えられなかったのかもしれません。
彼女にとってどう行動すれば良かったのか。今後の課題点として浮き彫りになりました。
けれども『お客様のためを思って行動した』ことは問題ではありません。むしろ良く気づいて行動に移したと褒めても良いことです。この件をすべて否定してしまうと、彼女はそれ以降、余計なことはしないで、言われたことだけやっておこうと思うかもしれません。自立的な行動を認められない体験は、仕事へのモチベーションを下げてしまうことにもなります。
理由を尋ね、客観的に問題を分析し、課題点とそうでない点に着目して具体的、論理的に伝えるよう心がけましょう。そうすることができれば、急き立てるように席移動を案内してしまった彼女にも、その褒められるべき行動の何が問題でお客様は気分を害されたのか、次同じようなことがあれば、どうすればよいか、改善すべき点を明確に伝えられたことでしょう。
STEP3 まず考えさせる アドバイスはその後で
人格的な非難や抽象的なダメ出し、たとえば「もっとしっかりやってください」「意味がわからない」などの発言は、言われた相手は自信をなくし、やる気を失う結果に繋がります。
では、どのようなフィードバックが適切なのでしょうか。
先ほどのお店のケースでは、「もしその場面に戻ったとしたら、あなたはどうしますか?」と彼女自身に考えさせると良いでしょう。その考えに基づいて、ロールプレイングを行うのも効果的です。
このとき大切なのは、良い点、悪い点(改善点)の両面から指摘することです。まず褒めることで、フィードバックを受ける側にも、フィードバックを受け入れる体制を作れるようにしてあげましょう。
事実にもとづいた指摘なら、伝え方こそ意識すれば、外国人スタッフの心にも響きます。
お客様からのお叱りを受け落ち込んでいた彼女も、単に「すみません」と謝罪して終わりでは、自己肯定感は感じられないでしょう。
一見すると変に見える行動も、文化的背景や、個人の思い、理由があるかもしれません。イライラしてしまって、視野が狭くなり、大切な事実を見逃さないように、上司であるあなたは、常に冷静に周囲を見渡し、こうしたピンチをあなたの部下の成長が期待できるチャンスとして活かしてください。
良いフィードバックとは、たとえ問題行動の指摘や注意であっても、結果として相手のモチベーションをアップし、成長を促します。
理解しようと自分を見てくれて、適切なフィードバックをくれる上司であるあなたはきっと、フィードバックを受けた外国人スタッフにとってとても心強い存在となるでしょう。
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