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グローバルスタンダードな指示出しで仕事をスムーズに~初めての外国人部下を持つ上司の心得

2019/09/20


みなさん、こんにちは。
トップマナーOJTインストラクター石井由美子です。

日本における外国人労働者は年々増加しています。外国人の部下を持ち、仕事を任せたり、指導する立場になる人も今後はどんどん増えることでしょう。

異なる価値観や文化背景を持つ外国人とうまく仕事を進めるには、わかりやすい「指示出し」が必要です。
日本人は指示以外のことも「察して」行うことがありますが、外国人にとっては指示されたことがすべて。逆に指示をしないあなたが上司としての能力を問われかねません。
思わぬミスや行き違いが起こってから慌てないよう、工夫したほうが得策ですね。

航空会社で多くの外国人と一緒に乗務していた経験、また大学非常勤講師として留学生にキャリア指導を行う立場から、グローバルスタンダードな3つの指示出しポイントをお伝えします。

指示出しは、全体像から。 結論から話す「Whole Part法」で

Whole Part(ホールパート)法とは、まず結論から話す方法です。なにをやるのか全体的な(Whole)イメージをさせ、次に詳細や具体的な方法(Part)を伝えます。冒頭で全体像が伝わるため、聞き手は聞く準備ができ、話を整理しやすくなります。

そのためには思いつきで話さず、まず一度自分の中で整理して組み立ててから伝える習慣をつけましょう。会話はキャッチボールと言いますが、指示出しも同じ。相手が受け止めることのできるボール(指示)にするのです。

例:「プレゼンテーションの準備について3点伝えます。まず、○○をしてください。それから○○、そして○○です」

Whole Part法という伝え方を身につけると、相手が理解しやすく、順を追って仕事がしやすくなります。また、Whole Part法で話すことを意識することで、自分自身の行動の整理や優先順位のつけ方も身についてきます。
思いつくまま指示をしない。あいまいな表現をしないという意識も高まってきます。

また、外国人は長文で話されると思考がついていけなくなりますので、文章を短くするためにも役立ちます。

次の指示を待つ様子の外国人スタッフ

次のAさんとBさんの指示の例を比較して、違いを見てみましょう。

Aさん
「やってほしいことがあって……、金曜日までにこの資料の英語に間違いがないかチェックして、それから写真素材も探してほしいです。あと写真はこのファイルから探してね。それと英語の間違いは付箋をつけてください。写真は10枚くらいかな。プレゼンテーションの資料に使うので……」

Bさん
「プレゼンテーション資料の準備をしてください。3点お伝えしますね。1点目です。英語の間違いがあれば付箋をつけてください。2点目。写真をこのファイルから10枚選んでください。3点目。期限は金曜日までです」

いかがですか?
Bさんのほうが、イメージがつきやすいですね。相手が、何をするのかをおおまかに理解してから、必要があれば、さらに詳細な説明を加えます。たとえば、「どんな付箋をどのようにつけるのか」などですね。

わかりやすい「やさしい日本語」で話す

私たち日本人にとっては普通に使う日本語が、外国人にとっては難しく、理解できなかったり、誤解をまねいたりすることがあります。
わかりやすく話すための、いくつかのポイントがあります。

パソコンの前でOKサインを出す女性

・ゆっくりと相手を見て話す。

音としてきちんと最後まで明確に伝えることが大切です。
日本語は、文章の最後で肯定か否定か、また疑問文なのかがわかる言葉です。文末まで丁寧に話しましょう。
相手の表情などを見ることで、理解したかどうかも伝わってきますね。

・カジュアルな言葉遣いより「です」「ます」のほうがわかりやすいことがある。

カジュアルな言葉がわかりやすいとは限りません。
親しみを伝えるつもりで言った「これ、やっておいてね」よりも、「これをやってください」がわかりやすい、「見ちゃった」より「見ました」がわかりやすいことがあります。
これは、外国人が日本語を学ぶ際、「です」「ます」体の汎用性の高い言葉を学ぶためです。

・日本での仕事に慣れるまでは、できれば熟語を避ける。

なにげなく使っている熟語が、相手にとっては理解できないことがあります。
たとえば次のように言い換えるようにしましょう。
開始する➡始める
長時間➡長い時間
進捗報告してください➡○○日までにやってほしいですが、△△日にどのくらいやったか、わたしに言いに来てください

・曖昧な表現を避ける

日本人同士では曖昧な表現でも伝わりますが、外国人にとっては判断がつかないことも。たとえば、次のような表現です。
いいかもしれない➡いいですね
やれないこともない(二重否定)➡きっとやれます
「こないだの」「あれ」「主語がない」などの事例の紹介➡「○○日の」「○○社の見積もりのこと」など具体的な言葉で

こうして考えると、わたしたちは意外と曖昧な言葉を使っていることに気づきますね。

指示をしたら復唱させて、報告が必要なことを伝える

外国人も、「何度も聞くこと」はあなたに迷惑をかけるのではないかと躊躇します。理解度をはかるために、こちらから指示した内容を復唱させてください。
復唱のあとは笑顔で「お願いします」と言いましょう。

また、指示されたことには報告が必要なのだということを伝えましょう。
日本人なら当たり前に思うかもしれませんが、「このくらいのことは報告しなくても良い」「日々のルーティンワークは報告しなくていい」「どんな場合にいつ報告するのかわからない」と思っている外国人も多いのです。

これは、もともと報告という発想がないことからくるものです。または海外では指示した上司のほうから結果を聞きに行くという習慣があります。
「頼まれたことはやるのが当たり前なので、いちいち報告するのは時間の無駄」「自分のことを信じてくれていないのか?」「細かくて面倒くさい」とも思うようです。
仕事の途中、他部署へ行くなどして離席するとき、食事に行くとき、また戻ってきたときなどに、その都度、声をかける日本の習慣に驚く外国人もいます。

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報告をすることは、互いのミスや思い込みを防ぐ利点があること。上司は仕事の進行具合を知っておきたいことなど、報告の意義を理解させるのはあなたの役割です。

あとからトラブルになるより、ちょっと工夫をしてスムーズなコミュニケーションを行うほうがスマートです。思いつきで言いっぱなしにならない思いやりもマナー。
外国人への指示を通じて、自分の思考もクリアになっていく効果もありますね。
これらは外国人への指示に限らず、「デキル上司」としてのスキルとなっていくでしょう。

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このマナーについては、#ソーシャルマナー #インバウンドコーチⓇ #英語接遇ベーシック

日本マナーOJTインストラクター協会
トップマナーOJTインストラクター 石井 由美子

講師 石井 由美子 blog

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